議会報告ASSEMBLY REPORT
2020.12.22 カテゴリ:令和2年11月定例議会 3.がんゲノム医療について
<質問>
がんゲノム医療について、医療政策局長にお伺いします。
先日、国立がん研究センターより、令和元年の各都道府県別のがんによる「75歳未満年齢調整死亡率」が公表されました。気になる本県の死亡率ですが、平成30年の、人口10万人に対し、65.1が、令和元年では63.9とやや減少、順位は平成30年と同順位の4位でした。
また、この死亡率は国のがん対策推進計画の基準になる平成17年から毎年公表されており、平成17年の死亡率は94.3で34位でした。平成17年の値を100とすると、令和元年の63.9と比較すると14年間で32.2ポイントの減少となりますが、この減少率は平成30年に続き、全国一の減少率となります。
NPO法人の主催ではありますが、全国の患者会など、がんに関わる関係者が一堂に会し、がん対策について議論する「がん政策サミット」が毎年東京で開催されています。私も長年、がん議連を代表して参加し、他府県の方と情報交換させていただきました。そこでよく耳にするのは、奈良県のがん対策推進計画はよくできている、という声です。その理由のひとつは、奈良県の計画は、施策のあるべき姿を設定し、そしてそのためにやるべきことを考えていく「ロジックモデル」の手法で作られているということ、二つ目は、がん対策を、行政だけでなく、患者会や医療関係者、議員が一緒になって議論しているという姿勢が他にないということのようです。
先ほどの奈良県のがん死亡率がなぜ大きく改善したかについては、科学的根拠に基づいて証明するのは難しいものがあるとは思いますが、知事が会長となり設立した「がん検診を受けよう!」奈良県民会議に代表されるように、いろいろな関係者の地道な地域活動が功を奏したと言えるのではないかと考えます。
今後、ぜひともがん死亡率全国一位を目指して取り組んでいきたいところではありますが、全国一位である長野県との差は5ポイント以上あるようです。その差を縮めるためには、やはりがん医療の充実が重要です。中でも、先進的な医療の一つである「がんゲノム医療」の体制整備を進める必要があります。
がんゲノム医療とは、主にがんの組織を用いて、多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異を明らかにすることにより、一人一人の体質や病状に合わせて治療などを行う医療です。全国にがんゲノム医療中核拠点病院やがんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院が指定されており、全国どこでもがんゲノム医療が受けられるようになることを目指して、体制づくりが進められているところです。
県内では、奈良県立医科大学附属病院、近畿大学奈良病院に継ぎ、奈良県総合医療センター及び天理よろづ相談所病院が、がんゲノム医療連携病院に指定されるなど、体制整備が進められているところですが、今後、より迅速なゲノム治療を行うためには、奈良県立医科大学附属病院が「がんゲノム医療拠点病院」に指定され、県内のがんゲノム医療の牽引役となることが重要と考えます。
そこで医療政策局長にお伺いします。
奈良県立医科大学附属病院において、どのようにがんゲノム医療体制の整備を進めているのか、また、がんゲノム医療を推進するためどのように取り組むのか、あわせてお伺いします。
(医療政策局長答弁)
がんゲノム医療は、がん組織の遺伝子変異を明らかにすることで、患者の体質や病状に合わせて治療を行う医療です。標準治療がないがんや、標準治療が終了した患者を対象に効果が期待されており、がんゲノム医療を県内でも受けられる体制の整備が求められてきました。
本県では、「がんゲノム医療連携病院」が4カ所指定されている一方、がんゲノム医療に必要ながん薬物専門療法医が現在8人と少なく、また専門的な人材育成の場である腫瘍内科学講座がないなどの課題がありました。
このため、県では県立医科大学附属病院に、「ゲノム医療・腫瘍内科学講座」の早急な設置を支援してきたところであり、9月に教授の公募・選考を開始し、10月には講座が設置されたところです。
また、来年度からの本格的始動に向け、大学においてがんゲノム医療に従事する看護師や相談員の資質向上のための研修を実施するほか、各診療科を横断的にマネジメントする、がん薬物療法専門医を増やすための育成プログラムを構築しているところであり、構築後これに基づき診療や研究の指導を行っていきます。
今後も、県内において、より質の高いがんゲノム医療を提供できるよう、県立医科大学附属病院を中心としたがんゲノム医療体制を整備してまいります。